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燻煙材の燃焼温度が高すぎることで燻製は苦くなります。
燻製は木材を燃やした(不完全燃焼させた)際に生じる風味を利用していますが、燻煙材の燃焼温度は燻製の風味に大きな影響力があります。たとえば燃焼温度が低いと甘くフルーティーな風味を発し、燃焼温度が高いと辛くスパイシーな風味を発する傾向があります。
このことからも苦味には燻煙材の燃焼温度大きくかかわっています。
燻製の風味成分とは?
燻製の風味は燻煙材の基礎成分により変化します。
木材はセルロース(細胞壁の枠組み)、ヘミセルロース(細胞壁の充填剤)、リグニン(細胞壁補強材)により構成されています。セルロースとヘミセルロースは糖分子が結合したもの、リグニンはフェノール性分子が複雑に連結したものです。
これらの基礎成分は燃焼により異なる副産物を生成します。
- セルロース、ヘミセルロース:甘い匂い。果実、花、パンなどの匂い。
- リグニン:スパイス臭、甘い匂い、ツンとする匂い。
このため燻煙材にはリグニンの少ない木材が好まれます。
また、リグニンの割合の多い燻煙材は燃焼温度が高くなるために発がん性の証明されている多環芳香族炭化水素(PAH)が多く生成されます。そのために長期的な健康を考えた場合には熱源の温度を高くしすぎないことがポイントになります。
常緑樹に関しては樹脂が多いために燻煙材には適しません。
風味成分と温度の関係は?
燃焼温度が高いとスパイシーな風味になります。
燻煙材の燃焼温度は比較的低温(300~350℃)が適温だと考えられています。これはセルロースとヘミセルロースの引火温度であることに加えてリグニンが積極的には燃焼されない温度帯であるためです。また木材が発火しにくい温度帯でもあります。
以下は基本成分の燃焼温度です。
- セルロース:280~320℃
- ヘミセルロース:200~250℃
- リグニン:400℃
燻煙材は300~350℃を目標に燃焼させます。
そのため燃焼温度の高い燻煙材(メスキート材など)を使用する場合には「密閉性の高い燻製器を使用する」「スモークチップを水で湿らせる」などの対策が取られます。また、高すぎる温度は風味分子自体が分解されてしまうために異臭の原因にもなります。
ちなみに発火してしまう場合には注意が必要です。
木材には引火温度と発火温度があります。引火温度とは「口火により火が付く温度(260~290℃)」であり発火温度とは「自ら火を発する温度(350~450℃)」です。このことからも燻煙材は300~350℃を目標に燃焼させることになります。
適切な温度管理ができていれば火が出ることはありません。
燻製を苦くしないためには?
燻煙材の燃焼温度の管理は複雑です。
燻煙材がスモークウッドの場合は比較的安定した燃焼をします。しかしスモークチップは温度管理の難しい燻煙材ですのでチップを入れた受け皿と熱源との距離や火加減、燻製器のサイズや密閉性などにより燃焼温度は大きく変化することになります。
条件によっては発火してしまうことも珍しくありません。
このことからも「チップを入れた受け皿と熱源との距離」や「熱源の火加減」などを調節することにより「チップの燃焼温度(300~350℃)」と「燻製器内の温度」が最適になる条件を見つけ出すことがポイントになります。
高すぎる燃焼温度は苦味の原因になりますので注意が必要です。
【まとめ】燻製が苦い?
燻製が苦くなるのは燻煙材の燃焼温度が高すぎるためです。
木材(燻煙材)は不完全燃焼することで燻煙が発生しますが、燻煙は燃焼温度によって燃焼副産物が変化します。たとえば280~320℃ではセルロース、200~250℃ではヘミセルロースが燃焼するために甘くフルーティーな風味が生成され、400℃ではリグニンが燃焼するために辛くスパイシーな風味が生成されます。また、温度が高すぎると風味成分自体が分解されてしまうために異臭が生じてしまうこともあります。
これらのことからも燻煙材の燃焼温度は300~350℃ほどが理想的だと考えられています。